プロが教える!CADトレースのためのステップバイステップ
紙図面の山から必要な図面を探すのに苦労していませんか?もしくは紙図面しかなく、万が一のためにCADデータへ変換したいけれど、どうすれば良いか途方に暮れていませんか?もしこのように紙図面、手書き図面をCADへ変換する際に、担当のあなた自身が作業をするとしたら、どのような手順を踏むのか例を追って説明します。これらの作業をCADを知らないあなた、もしくは担当者がやるのでしょうか?それを踏まえて、手書き図面をCADにする手順をステップを追ってご説明いたします。
1. はじめに
CADトレースは、建築や製造プロジェクトにおいて、手描き図面や紙図面をコンピュータ上で扱えるCADデータに変換する非常に重要な作業となります。当然ですが、高精度なCADトレースはプロジェクトの成功や、設計・修正作業に欠かせません。しかし、CADの知識がない担当者には、その手順や重要性がわかりにくいこともあると思います。もしくは、図面だけを見て、線を引くだけと軽く思っている方もいるかもしれません。本記事では、CADの知識がない方でも紙図面をCADへ変換する手順を理解できるように、ステップバイステップで分かりやすく解説しています。簡単な絵を入れていますので、合わせて状況を想像しながら見てください。
2. 事前準備とツール選び
高精度なCADトレースを行うためには、まず適切なツールとソフトが必要不可欠です。ここをケチることで、成果品に大きな差が出てきてしまいます。まずは手描き図面を高解像度にスキャンし、デジタルデータ化することが最初のステップになります。よく利用されているのに、Scan2CADやAutoCAD Raster Designなどがあります(もちろんこれ以外にも多くのソフトがあります)。これらのソフトは、紙図面をパソコンで扱えるデジタル形式に変換することが目的で、その後のパソコン編集を容易にする機能を備えています。紙図面をスキャンする作業環境を整えることも大切です。十分な照明と図面が紛れてしまわないよう整理された場所で作業を行うことで、作業効率も上がりますし、無駄なスキャンミス等を防ぐことができます。
3. ステップ1:手描き図面をデジタル化する
まず、紙図面をスキャナーを使ってパソコンに取り込みます。この過程を経て初めて紙図面をパソコン上で扱えるようになるので大切な第一歩です。高解像度でスキャンする必要があり、設定を最適化することで、図面の細部まで正確に取り込むことができます。この設定を間違えると、線がぼやけてしまったり、細部がにじむことでCADトレースすることが困難になります。スキャン後のデジタルデータは、鮮明で見やすいものであることが必要条件となります。画像が不鮮明だと、後のCADトレースする際に、文字の読み間違いや、無駄に時間がかかることもあります。また、記号の読み間違いなどの誤解が発生する可能性が高くなるので、最初の取り込み設定には十分に注意してください。
例
担当者が古い建物の紙図面をスキャンして、PDFや画像ファイルとしてパソコンに取り込む場面を想像してください。スキャンした図面は、次のステップでCADソフトに取り込まれます。この段階では、適切な解像度とフォーマットでスキャンすることが求められます。例えば、300dpi以上の解像度でスキャンすることや、ノイズ処理を施すことで、細部まで鮮明にデータ化できます。また、スキャンしたファイルはJPEGやPNG形式ではなく、PDFやTIFF形式で保存することをお勧めします。これはCADトレースを前提にしていますので、後の処理がスムーズにできます。(CADの下絵として取り込むにはPDFかTIFFがベストです)
4. ステップ2:初期トレース(データ変換)
次に、スキャンしたPDFやTIFF図面をベクター形式に変換します。ベクター形式とは、スキャンした図面を線や文字などの形として認識するデータ形式のことをいい、ラスターベクター変換ともいいます。このベクター変換したCADデータは、図面を拡大・縮小しても画質が劣化しないことが特徴です。変換ソフトを使用すると、図面を自動でトレースし、線と文字を区別してデータ化することができ、手作業によるCADトレースに比べて時間と労力を大幅に削減できます。しかし、先に述べたように、まだ完全な自動化には程遠く、ある程度の修正が必要となりますし、図面によってはベクター変換ではCAD図面として使い物にならない場合は手作業でのCADトレースとなります。
例
担当者がスキャンした図面を専用ソフトに取り込み、ソフトが自動認識でベクター形式に変換する様子を想像してみます。この過程では、ソフトが図面の線を正確に認識するために、高品質なスキャンが絶対条件となります。また、変換後のベクターデータを確認し、不要な線や点、カスレ、誤った変換部分を修正する作業も必ずついて回ります。例えば、手描き図面にはよくある汚れやしわがある場合、それらが線や点として認識されることがよくあります。これらをソフト的に取り除くために、フィルタ機能や手動での取り込み設定を調整しながら行います。
5. ステップ3:細部の調整がほぼ必要と思ってください
ベクター化された紙図面は、実際にパソコンで開いてみると分かりますが、細部を調整する必要があることがほとんどです。これは古い紙図面ほど顕著で、青焼き図面では必ず紙の状態に合わせて調整が必要になります。自動変換されたベクターファイルには誤差が含まれていることが多いので、CADを使って線の太さや位置を調整します。特に、複雑な図面では、手動での修正が必ず必要です。これらを経て、取り込んだ図面の精度が高まり、後の工程で起こりうるエラーを最小限に防ぐことができます。
例
ベクターファイルへと自動変換された図面の線がかすれていたり、ずれていたり、重複していたりする部分を、担当者がCADを使って一枚ずつ修正する様子を想像してください。この作業では、CADを使って、細部を丁寧に確認しながら修正していきます。例えば、取り込んだ際の傾きを補正したり、線の太さを統一したり、接合部の隙間を埋める作業などの調整をすることで、図面全体の統一感を一定に保つことができます。また、建物の間取り図の場合では、壁厚さや窓位置の微調整も合わせて行います。これにより、正確な図面が完成します。紙図面は想像を超えて伸び縮みしています。
6. ステップ4:最終チェックと仕上げ
最後に、出来上がったCADトレース図面を最終チェックします。紙図面とデジタル図面を必要に応じて見比べ、所定の線や文字などが正確にトレースされているか、必要な情報がすべて含まれ抜けがないかを確認します。この工程は、最後の最も重要なステップとなります。正確で抜けのない図面があって初めて、後の設計や施工がスムーズに進行できます。また、データ保存とバックアップも忘れずに行ってください。データ紛失や破損防止には必要な作業となります。
例
担当者が紙図面とパソコン画面のCAD図面を見比べながら、最終的な確認を行う様子を想像してください。紙図面の各部分とCAD図面を端から順に照らし合わせて、すべてが一致しているかを確認します。また、必要に応じ修正・調整を加えます。例えば、建物の外形や内部の間取りが正確に再現されているか、部屋の名称は間違いがないか、寸法が正しいかを確認します。最終確認が完了したのち、CAD図面を安全な場所に保存し、必要に応じてバックアップを取り、さらに、すぐに確認できるように印刷しておきます。
7. おわりに
CADトレースを行うためには、完成品を想像しながら注意深く事前準備を行い、ファイル名の付け方など詳細な作業が必要となります。この記事で紹介したステップを参考にすれば、CADを知らない担当者でも正確に紙図面をCADデータに変換することができます。しかし、単純にスキャンしてデータ変換すればいいと思っていた方は途中の作業に驚かれると思います。それほど紙図面をCADトレースすることは単純なものではありません。先ほど言ったように、古い青焼き図面では線や文字が消えていることはざらにあることですので、その手間は膨大になります。
当社では、高精度のCADトレースを提供することができます。分野の知識を有する人がCADトレースすることで、下手にベクター変換して修正することを考えると、はるかに精度よくCADトレースすることが可能となっています。このような大変な想いをして一枚ずつCADトレースするのであれば、ぜひ、当社にご依頼ください。